こんにちは!HanFilmです🌸
今回紹介するのは
チョン・セランの長編小説、
『保健教師アン・ウニョン』
(原題: 보건교사 안은영)
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(引用: 민음사 インスタグラム)
もうすぐNetflixでドラマが配信される本作、映像として新たな印象がついてしまう前に、無限に想像できる文学としての『保健教師アン・ウニョン』を見ていきましょう!
あらすじ
高校の養護教諭として働くアン・ウニョンは、昔から死人や、生きている人の放つ考えの塊のようなものを見る能力を持っていた。彼女はBB弾とおもちゃの剣、そして漢文教師のホン・インピョと共に、学校にはびこるモンスターに立ち向かう。
全体の印象
短編集とも言える構成で、1話ずつのつながりはそこまで強くないですが、学校という場所で起こる、普遍的なことを想像力豊かに、ファンタジーに昇華させています。
ポップな軽さがあるので、深く意味を考えるというよりも、流れに任せて読み進められる良い意味でライトな作品です。
ジェリー・フィッシュ
保健教師が、おもちゃの武器でモンスターに挑む、一見すると厨二病的でもある、ファンタジーな設定です。
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(引用: ネットフリックスコリア公式インスタグラム)
学校財団を立ち上げた祖父を持つ、ホン・インピョ。過去のオートバイ事故のせいで、いつも足を引きずっています。
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(引用: ネットフリックスコリア公式インスタグラム)
祖父が遺した学校で漢文教師として勤務するインピョ。学校、そこは常に自殺、事故、非行の温床でした。
ある日、閉ざされた地下室で、予期せず「何か」の封印を解いてしまうインピョ。最初の章では、主に失恋について視覚的に、壮大なスケールで描かれます。
強力な守護力のある誰かに守られているインピョは、ウニョンのパワーの充電器として、行動を共にすることになるのでした。
2人の関係
ウニョンの最初の友達、ジョンヒョン。輪郭のはっきりしない小さな友達は、変わらない無害な存在として、ウニョンの過去、記憶に通じています。
インピョの足の悪さを小さな問題だと思うウニョン。言葉の端々にウニョンとインピョの性格が表れます。
パワースポット巡りは、一見するとデートですが、ウニョンは本当に「パワー」を吸収するために行っているのです。
南山タワーの南京錠からパワーをもらうなど、恋愛の定番のような不思議な関係性を、2人はあくまでそういう感情なしに業務的に行なっているところが可笑しくも、関係の変化が楽しみな設定です。
真逆?の二人
パク・ミヌ、別名混乱と、ク・ジヒョン、別名幸運(ラッキー)の二人。一緒だと面倒を起こすけれども、一緒にいることが心地良い。
学生にはこういう人も多いですよね。一人だと真面目なのに、誰か特定の人と一緒だと化学反応を起こすような、高校生ってそういう生き物です。
2人が、自分の内面を守れるようにと奮闘するウニョンとインピョ。個人的に一番解釈が難しい章でした。
保護と愛
いじめにあうユジョンは、英語教師マッケンジーに片思いをしています。そして親からは、腫れ物のような視線を感じます。10代の不器用な子どもは、自身に対する「保護」者の視線にあまりに敏感で、愛、恋愛だけでない愛情に飢えているのです。
ウニョンの仕事は、報酬のない親切であり、損な役回りだとうんざりすることもあります。しかし彼女は、マッケンジーとは違い、ブラックマーケットでのビジネスには決して手を出しません。あくまでも親切として完結させるところに、ウニョンの正義感を感じます。
有名人の娘
有名ミュージシャン、ジョシュア・チャンと娘のラディ。そしてジョシュアの現在のパートナーと、過去の女性。過去に縛られる家族の再生を描きます。
同級生
不良の姉を持つ同級生は、学生時代一人ぼっちだったウニョンの友達ともいうべき存在でした。BB弾と剣をくれたのはガンソンだったのです。
親切によってときに傷を負うウニョン。道具を使うことで傷つかないようにというガンソンの優しさでした。ディテールが消えていく表現が、繊細で好きでした。
転校生
この学校のバグを修正しようとやってきた転校生のパク・ヘミン。突然出現することで存在する彼女は何十回生まれてくる中で初めて、生きたいと願います。生きていくことは欲望や焦りなど、人間臭さにまみれることだと、初めて知るヘミンです。
校庭の竜巻
ラスボスとの対決とも言える最終章、竜の飲み込んだ制服は、富の犠牲と言えるかもしれません。
生徒に人気のない生物教師や、教科書の選定と上からの圧力に葛藤する歴史教師など、生徒だけでなく、教師もまた、悩む人間として描かれます。
学校という閉鎖的な世界を、そしてそれを取り巻く外の世界をも映し出す作品として読み進めて、最後には愛で終わった作品でした。ファンタジー小説とも言えるし、ドラマの脚本っぽくもある。
文字通り、パワーの源としてのインピョの存在は、ウニョンに必要だった一方で、厄介だけどパワフルなウニョンもまた、インピョに必要な存在だったと言えるでしょう。
保健室という空間
主人公が保健教師というのは、保健室が、学校の中でどこか学校らしさのない空間として存在するという認識の中で、面白いチョイスです。
それぞれの持つ保健室のイメージは、国や年代、性別によって様々ですが、私には、いつも太陽のような温もりの場所でした。
「先生」と呼ぶのかどうかもわからない、それよりもお姉さん、おばさんという方が似合うような存在。そして、(物理的に)傷を癒してくれる場所。
外の世界とも違う、特殊な学校という空間。そこにはモンスターが住んでいるのです。そして、同時にそれを退治するウニョンのような存在も必要なのです。
人知れずそんなモンスターを消し去ってくれる、保健教師という存在によって、私たちは、そんな邪悪な存在に気づかず生活できているのかもしれません。
チョン・セランさんの知人の名前が数多く登場する本作は、彼女が魂を吹き込んだ、個性的な登場人物に溢れています。
実写ドラマ化
Netflixで9月25日から配信予定のドラマ『保健教師アン・ウニョン』。チョン・ユミとナム・ジュヒョクがどんな化学反応を見せてくれるのか楽しみです。
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(引用: ネットフリックスコリア公式インスタグラム)
チョン・ユミ
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(引用: チョン・ユミ公式インスタグラム)
1983年生まれ。
出演作品
ドラマ
『ロマンスが必要』、『恋愛の発見』、『ライブ』他。
映画
『愛する少女』、『トガニ 幼き瞳の告発』、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『82年生まれ キム・ジヨン』他。
出演作品を見ると、シリアスな作品が多いのですが、なぜか明るいイメージの強い彼女。本作では、深く悩み込むよりも、とりあえず進んでみる保健教師を演じています。
ナム・ジュヒョク
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(引用: ナム・ジュヒョク公式インスタグラム)
1994年生まれ。
出演作品
ドラマ
『恋するジェネレーション』、『華麗なる誘惑』、『恋はチーズ・イン・ザ・トラップ』、『麗<レイ>』、『恋のゴールドメダル』、『ハベクの新婦』、『眩しくて』、『スタートアップ』他。
映画
『安市城 グレート・バトル』他。
少年のような若々しいキャラクターとして、ラブコメへの出演が多いです。しかし、ドラマ『眩しくて』での影のある演技を見ると、本作の賢明な教師としての、冷静な一面も想像できますね!
小説からの実写化で、恋愛要素が前面に出てしまうケースはかなり多いです。しかし本作は、元々の小説の方でも、割と2人の関係性に関する比重が重いです。
果たして、それぞれのエピソードがしっかりと意味を持ちつつ、2人がスパイスになってくれるくらいのバランスになるでしょうか。
予告映像を見ましたが、カラフルなモンスターたちのポップさが、原作のライトさを引き継いでいて、期待できます。VFXのポップさが、安っぽくならないことだけを祈って…!
最後までご覧いただきありがとうございます!
次の記事もお楽しみに!
ドラマ『保健教師アン・ウニョン』の原作、
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