こんにちは!HanFilmです🌸
今回紹介するのは、韓国文学
アーモンド
아몬드
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(引用: @boooks_pick インスタグラム)
じわじわと人気を確立している韓国文学。
そのトップを走っていると言っても過言ではない一作です。
無表情の少年の表紙、見たことのある方は多いのではないでしょうか。
著者はソン・ウォンピョン(손원평)。小説家であり、映画監督でもある彼女。
2020年にはサスペンススリラー映画『食われる家族(침입자)』を監督しました。
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(引用: ソン・ジヒョ公式インスタグラム)
本作は2017年に韓国で発表され、日本の「2020年本屋大賞」翻訳小説部門で第1位を記録した長編小説です。
あらすじ
生まれつき扁桃体が小さく、感情を感じ取ることの難しい少年ユンジェ。ユンジェは、「普通の子」のように生きることにこだわる母親に育てられ、生きてきた。ある事件をきっかけに一人になってしまったユンジェ。不良少年ゴニとの出会いをきっかけに、自身を取り巻く感情の渦に巻き込まれていく—。
感想
感情の渦中
感情を感じにくい少年ユンジェを取り巻く、目まぐるしいほどの感情の正体。
家族、友人と対峙し描かれる彼の疑問とそれぞれの答え。
騒々しいわけではないけれど、ユンジェの進む人生、その展開があまりに劇的です。
著者が映画監督としても活躍する方なので、映像として思い描くに難くない文章がとても読みやすいです。
感情の有無という対極をはっきりと表しながらも、やはりどこか捉えきれない感情というテーマ。
読んでいる間、絶えず心がざわざわしていました。
時に、主人公のように感情を感じないように装ってみようとしたり、読み進める行間の感情の正体を知りたくて、自身の経験と照らし合わせようとしてみたり。
感情の薄い少年を主人公にすることで、むしろ感情にフォーカスする内容になっています。
そして、異常なほどに感情的なゴニという友人の存在。その起伏を理解することができないユンジェは、常に彼の感情に疑問を持ちます。
感情を持たないユンジェは、論理的に感情を理解しようと、感情と言動を結びつけようとします。
普段、あまりに自然に沸き起こる感情。この2人の存在によって私たち読者は、客観的に感情というものを見つめることになります。
2人の怪物
対極にあってとても似ている人物というのは、割と物語の定石と思うのですが、劇中の主人公ユンジェとクラスメイトのゴニ、この2人が「似ている」と認識できたのは、読み終わって少ししてからでした。
単に私の理解力がスローだったせいでもありますが(笑)
劇中で「怪物」と表現される2人。感情を感じられないユンジェと感受性の強すぎるゴニ。
それに対して私たち多くの読者はきっと、2人の「怪物」の間のどこかに漂う存在です。
かといって2人のように「怪物」的な一面が無いと断言してしまうことは、実はかなり困難ではないかと思います。
涙もろいとか、我慢強いとか、人それぞれの個性には程度がありますが、それは果たして生まれた瞬間から持っているものでしょうか。
ユンジェに生まれつき欠如したもの。それを補おうとする母親のエゴは、不器用な愛だったと思うのです。
ゴニが受けることのできなかった愛。ゴニの反抗はそれを求める叫びにも思えました。
映画化されてもおかしくないほどのドラマチックな内容ですが、行間という隙間があってこそ想像できることもあるので、小説で読んで良かったとも思える作品でした。
最後までご覧いただきありがとうございました☺️次の記事もお楽しみに!